
はじめに
電験三種の勉強を始めようと思ったとき、最初にぶつかる壁のひとつが「どの参考書から手をつけるか」という問題です。
書店やネットで調べると、「これだけシリーズ」「みんなが欲しかった!」「完全マスター」など複数のシリーズが並びます。どれが自分に合っているのか、一冊で十分なのか、科目ごとに変えるべきか——情報が多いほど、選択がしにくくなります。
実際に文系高卒・電気知識ゼロの状態から3年間独学で電験三種に合格した経験をもとに言うと、参考書選びは最初の学習速度を大きく左右します。選ぶ前に「今の自分がどのレベルにいるか」を確認することが、最も重要なステップです。
この記事では、0知識から独学で電験三種を目指す人が、自分の状況に応じて参考書を選べるよう整理します。
電験三種の参考書選びで最初に決めること
「自分は0知識か、ある程度知識があるか」を確認する
参考書選びの出発点は、自分の現在の電気知識のレベルです。大きく二つに分かれます。
電気の基礎がほぼない(0知識スタート)
- 電気工事士の勉強経験がない
- 電圧・電流・抵抗の計算式を見てもピンとこない
- 三角関数・対数・複素数という言葉を聞いてすでに不安
ある程度の基礎がある
- 電気工事士(2種・1種)を取得済み
- 電気系の専門学校・大学で学んだ経験がある
- 電気理論の基本的な計算ができる
0知識の方がいきなり「これだけシリーズ」を開くと、解説が途中で止まる感覚になりやすいです。一方で、ある程度知識がある方が「みんなが欲しかった!」だけで学習を進めると、問題演習量が不足して試験本番で得点できない可能性があります。
独学の場合は「誰に質問するか」も考えておく
職場の同僚に電気の専門家がいない場合、疑問が生じても誰にも聞けない状況になりやすいです。独学では、わからないことが積み重なって理解が止まりやすい。
ネット検索やYouTubeで補完する方法はありますが、情報が散らばっており体系的には学びにくいという側面があります。参考書だけで進むか、動画教材を組み合わせるかは、最初に検討しておく価値があります。
主要参考書シリーズの特徴と向き不向き
これだけシリーズ(TAC出版)
電験三種の参考書として長年使われているシリーズです。理論・電力・機械・法規の4科目別に分かれており、各科目に対応した練習問題が充実しています。
強み
- 練習問題の量が多く、繰り返し解くことで実力が着実に上がる
- 公式の導出過程や記号の意味まで確認しながら解く習慣がつく
- 科目ごとの典型問題パターンを体で覚えられる
- 合格者の多くが「練習問題を繰り返しとにかく解いた」と言う
注意点
- 電気の基礎がない状態で読み始めると、解説の言葉の意味でつまずきやすい
- 「答えを暗記する」ような使い方では効果が出にくい
- 初見では難しく感じて挫折するリスクがある
向いている人
電気工事士を取得済みか、電気系の基礎知識がある人。または「みんなが欲しかった!」を辞書として併用できる環境にある人。
みんなが欲しかった!電験三種シリーズ(TAC出版)
0知識から電験三種に入門する人向けに設計されたシリーズです。専門用語の説明が丁寧で、図解が豊富に使われています。
強み
- 専門用語・記号・単位を一から解説しているため、0知識でも読み進めやすい
- 図やイラストで概念をつかみやすく、最初の「壁」を越えやすい
- 通読することで各科目の全体像をつかめる
注意点
- 練習問題の量が少ないため、これだけでは試験本番の得点力が不足しやすい
- 合格レベルの実力をつけるには、「これだけシリーズ」との組み合わせが必要
向いている人
電気知識がほぼない状態から始める人、最初に「電験三種とは何か」を理解してから深めたい人。
0知識からの最強学習戦略:2冊併用法
0知識から電験三種に挑む場合、最も合格に近づきやすい戦略は「これだけシリーズをメイン、みんなが欲しかった!を辞書として使う」組み合わせです。
具体的な使い方
- 1. 「みんなが欲しかった!」でその科目の全体像と基本概念をつかむ
- 2. 「これだけシリーズ」を開き、練習問題を中心に学習を進める
- 3. 「これだけ」の解説でわからない用語・概念が出たら「みんなが欲しかった!」で確認する
- 4. ネット検索・YouTubeで補完する(ただし散らばった情報に注意)
この流れで進めると、用語でつまずいて止まる頻度が大幅に減ります。わからない言葉を放置して先に進むより、都度確認しながら進む方が、記憶の定着も理解の深さも上がります。
練習問題の取り組み方と現実的な目標
練習問題は「答えを見て暗記する」ではなく、「公式を書いて・単位を確認して・なぜこの式になるかを説明できる状態」まで持っていくことが合格への近道です。
同じ問題を2〜3回解き、最終的に「問題を見た瞬間に解法が浮かぶ」状態を目指してください。
「過去問10年分を3回解く」という目標をよく見かけますが、働きながらでは現実的ではない場合も多いです。5年分を2回しっかり取り組むことでも合格は十分に狙えます。量より「なぜそうなるかを理解したうえで解く」質の意識が、合否を分けます。
YouTubeと有料動画教材:参考書と組み合わせるか
参考書だけで学習を進めようとすると、理解できない箇所でどうしても詰まります。そのときに活用できるのがYouTubeです。無料で多くの電験三種解説動画があり、文字の解説より動画の方が理解が早い場合がほとんどです。
ただし、YouTubeの注意点もあります。情報が散らばっており、体系的に学べない点です。古い情報が残っていたり、見つけるまでに時間がかかったりするため、「補完」として使うのが正しい位置づけです。
もし予算に余裕があるなら、有料の動画教材を検討する価値があります。体系的に全科目を網羅しており、参考書では理解しにくい計算の過程を動画で確認できます。「動画で理解→参考書の練習問題で定着」という流れが、独学での最短ルートになりやすいです。
参考書だけの独学を選ぶ場合は、苦手科目・苦手分野を放置しないことが特に重要です。理解が不十分なまま進むと、試験直前になって取り返しのつかない弱点を抱えることになります。
数学の基礎が不安な人へ
電験三種の学習でつまずく最大の原因のひとつが、数学の土台の不足です。三角関数・複素数・対数・微分積分の基礎がないと、教科書の解説を読んでも計算の途中で止まります。
ただし、電験三種に必要な数学は大学レベルの高度な内容ではありません。中学数学から対数・指数・三角関数あたりまでの基礎計算を確実にすることで、大半の問題に対応できます。
数学に不安がある場合は、本格的な参考書に入る前に電験三種専用の基礎数学テキストを1か月ほど集中して取り組むと、その後の理解スピードが大きく変わります。
参考書を最大限活かすために意識すること
記号・単位の意味を書き込みながら読む
参考書を開いたとき、見慣れない記号(Ω・V・A・Hzなど)が並ぶだけで手が止まる経験をする人は多いです。記号と単位の意味がわからないまま式を見ても、理解が進みません。
参考書の余白や付箋に「Ω=抵抗を表す単位」のように書き込みながら読む習慣をつけると、次に同じ記号が出たときに止まらずに進められます。
電験スパイラルを避ける意識を持つ
毎年受験しても合格できない「電験スパイラル」に陥る人の多くは、過去問の答えを繰り返し暗記することに時間を使っています。試験は毎年問題の形式が変わるため、答えの暗記だけでは対応できません。
「この問題はなぜこの式を使うのか」「この単位はどこから来るのか」を毎回確認することが、スパイラルを抜け出す根本的な対策です。
学習継続:最初の1ヶ月が最も辛い
電験三種の学習で最も難しいのは、継続することです。
学習を始めた最初の1ヶ月は、慣れない内容と長い学習期間の見通しから辛く感じやすいです。しかし1ヶ月を超えると、やらないと落ち着かない状態に変わってきます。通勤・昼休み・帰宅後の細切れ時間を組み合わせた学習が定着してくると、旅行中でも自然にテキストを持参するようになります。
「完璧に理解してから次へ」よりも「毎日少しでも触れ続ける」を優先することが、3年間を乗り切る鍵です。
試験会場は必ず受験票で確認する
実用的な注意事項ですが、電験三種の試験会場は毎年同じとは限りません。前年と同じ場所だと思い込んで別の会場に向かってしまうミスは実際に起きます。受験票が届いたら、会場の住所を確認して地図で場所を押さえておくことを強くおすすめします。
学習計画は科目単位で立てる
電験三種は4科目(理論・電力・機械・法規)の科目合格制です。全科目を一気に攻略しようとすると、どれも中途半端になりやすいです。
半年で1科目の合格を目指し、2年間で4科目を通過するペースが、仕事・家庭と両立しながら継続しやすい設計です。最初の科目は法規か電力から入ると、理論・機械ほど数学の負担が少ないため取りかかりやすいです。
まとめ
電験三種の参考書選びは、現在の自分の知識レベルで決まります。
0知識からスタートするなら「みんなが欲しかった!」を辞書として使いながら「これだけシリーズ」をメイン教材にする2冊併用が、最も合格に近づきやすい選択です。数学に不安があれば、まず基礎数学テキストで土台を作ってから本編に入ることをおすすめします。
参考書をどう使うかも重要です。記号・単位の意味から確認する習慣、答えを暗記せず「なぜこの式か」を理解する姿勢——これが電験スパイラルを避け、合格に直結する学習スタイルです。
過去問は10年分3回に縛られる必要はありません。5年分を2回、意味を理解しながら解いた積み重ねが、実際の合格につながります。
ぎりぎりの点数で合格しても、電験三種を独学で取得したという事実は変わりません。文系高卒・非エンジニアであっても、その事実だけで転職市場での評価は大きく変わります。
電験三種の科目別の具体的な勉強法・学習順序については、以下の記事で詳しく整理しています。参考書選びが決まったら、次は学習の進め方を確認しておきましょう。
→ 電験三種の勉強法|社会人が独学で合格するための科目別対策と学習順序
電験三種の難易度・合格率・試験概要を基礎から確認したい方は、こちらも参考にしてください。

